「大夢敦煌」は蘭州歌舞劇院が2年の歳月を経て、敦煌をテーマに創作した作品です。この作品は敦煌の蔵経窟が発見された2000年(偶然にも敦煌学が100周年を迎えた年でもある)の春に北京で初めて上演し、2004 年には中国国家舞台芸術精品プログラムのランキングトップに位置づけられました。
「大夢敦煌」はこれまでに中国国内の30 余りの都市とオーストラリア、フランス、スペイン、ポルトガルなどの海外でも上演しており、日本公演でちょうど1,000ステージ目を迎えます。
ステージ上に鮮やかに再現された世界遺産《莫高窟(ばっこうくつ)》を背景に、清貧な青年画家〈莫高(モウガオ)〉と大将軍の娘〈月牙(ユエヤア)〉の、許されぬ恋の行方を描いた物語は、まるで中国版ロミオとジュリエットです。
(序章)
物語の舞台は20 世紀初頭の敦煌(とんこう)・莫高窟(ばっこうくつ)洞窟の番をする道士が大量の古文書を発見した。中の一巻をひもとくと、そこにはシルクロードを舞台にしたある愛の伝説が描かれていた。
(第1幕)
芸術の高みを求めて憧れの地・敦煌を目指す青年画家「莫高(モウガオ)」は、広大な砂漠のただ中で行き倒れ、幻の飛天を見る。
そこを勇ましく凱旋してきた軍隊の中に一人の見目麗しい若武者がいた。実は大将軍の愛娘「月牙(ユエヤア)」で、幼い頃から父に武芸を仕込まれた腕達者だ。
月牙は自分の三日月型の水筒を莫高に投げ与えて命の危機を救い、かわりに莫高が大切に抱える絵巻物を持ち去る。
(第2幕)
敦煌は東西文化の交叉するシルクロードの大都市。
活気に満ちた街中で莫高は月牙と再会し、二人の間には恋の予感が芽生える。
ある夜、洞窟の中で創造の霊感に打たれる莫高のもとに月牙は乳母を従えて忍んでくる。
巻物と水筒はそれぞれ持ち主の元に戻り、愛情の炎が燃えさかる。
(第3幕)
月牙の父は身分違いの恋を認めず、王侯貴族や大商人の中から娘婿を選ぼうとする。
求婚者の集まった舞踏会の夜、月牙は莫高の姿を追って、屋敷を抜け出してしまう。
(第4幕)
大将軍は軍隊を率いて洞窟を包囲する。
月牙は敢然と立ち向かい、自らの命と引き換えに再び莫高を救う。月牙の亡骸にはこんこんと尽きることのない泉が湧いた。
莫高は泉の水で絵筆をぬらし、憑かれたように飛天の大壁画を描くのであった。
シルクロードは鳴沙山(めいさざん)のふところに伝わる「莫高窟」と「月牙泉」の悲恋のものがたりである。
月牙の命の泉から力を得た筆で、莫高が憑かれたように描くクライマックスは圧巻の一言です。